関係人口創出モデル“GENSEN@SHIZUOKA digest”を実施しました
株式会社machimoriは、企業のリーダー育成と熱海の社会課題解決を目的として、熱海の社会課題を題材とした企業研修プログラムを提供しています。
今後は、舞台を熱海に限らず周辺市町にも広げたいと考えています。
「ふじのくに関係人口創出・拡大事業モデル創出」の委託を受け、富士市のNPO東海道・吉原宿とともに、5社7名の方々を対象とした2か月間のトライアルプログラムを実施しました。
参加者は2チームに分かれ、富士市吉原の「中心市街地再生」、熱海市網代の「防災」をテーマに、地方創生の課題解決に取り組みました。“コロナ禍の今、変革すべき喫緊の課題”に高い視点で取り組む現地リーダー「共創パートナー」と共に、チームとなってプロジェクトを検討しました。
<テーマ・共創パートナー>
<実施スケジュール・概要>
中心市街地再生 新しい層も多様に関われる、さらに魅力ある商店街へ
吉原商店街では近年、共創パートナーの鈴木さんをはじめ、ビルを持って新しいことを始めるプレーヤーが増えています。
受講メンバーは、「商店街を盛り上げるにはどうするか?」という全国の商店街が抱える大きなテーマを前に、悩みに悩んでいました。
ですが、実際に商店街に足を運んで鈴木さんや他のプレーヤーと話す中で、「自分たちが」楽しそうだと思うものに視点を変えていく必要があると気づきました。
そう考えたときに、彼らはこのプログラムで吉原商店街と出会ったばかりで、「おもしろい人が集まっていて魅力的だけれど、ちょっとだけ吉原に興味がある人にとってはその輪に入るハードルが高い」と感じていました。
そこで、エリアのリーダーを育て、商店街全体でビジョンを持って活性化に取り組み、中心となって動いているプレーヤーの周辺にいる人たちの認知を増やして巻き込んでいくという方向性を提案しました。
様々な角度から、それぞれのやり方でまちへの関わり度を増やし、鈴木さんのおっしゃる「やりたいやつがやる」「盛り上がった話は本当にやる」が、たくさん生まれる商店街であってほしいと思います。
防災 平時に人々の結びつきを強め、有事に避難できる拠点を作る
網代は、かつて「京大阪に江戸網代」と謳われた港町ですが、熱海市内でもとりわけ高齢化や人口減少が進んでいることに、受講メンバーは衝撃を受けていました。災害が起きたときに高齢者が安全に避難できる体制は整っているのだろうか?そもそもまちとして持続的なのだろうか?
一方で、都会からやって来た彼らは、網代の風景に感激し、「疲れたときにふらっとやって来て、美しい海を眺めながらのんびり過ごしたい」と口々に言いました。
防災と聞くと、「災害が起こったときにどうするか?」と考えてしまいがちですが、災害を防ぐためには平時の備えが重要です。
そこで、「楽しい、好きだと思えるまちを作ることが、人々の強い結びつきやまちの賑わいとなり、ひいては、もしものときに支え合うことにつながる」という考えに至りました。空き物件を活用し、平時には住民が生き生き働きながら来訪者も交流できる場、有事には避難所として足が向く場を作るという提案をしました。
メンバーは、まさに自身がターゲットだと言います。これからも積極的に地域の人たちとのつながりを強めて、持続可能なまちを一緒に作っていってほしいと思います。
地域課題に取り組んで見えた変化
初めて会う異業種の人たちと、初めて関わる地域の課題に挑んだ受講メンバー。始めは固定観念や先入観に囚われていましたが、インタビューや現地訪問を重ね、徐々に課題が自分事になっていきました。
報告会終了後、メンバーは、
「混乱しているときは早めにキューを出すことを意識していきたい。現地の人と話すことはとても刺激的であったので、こういう機会は自ら取って成長したい。」
「自分で見て感じた体験にいろいろなものが詰まっている。物事を深掘りすることが苦手だが、相手にも自分の考えがしっかり伝わるよう、常に自分にwhy?を問いかけていきたい。」
「チームメンバーから褒められた部分は、自信を持っている。アドバイスされた部分は、自覚はしているが、社外の人に言われるとより刺さるものがあった。」
「プログラムが終わっても、業界の力を生かして空き物件活用に関わりたい。自分の住むまちでも何かやってみたい。」
「何かを始めるときは、なんとしてでもやり遂げようとする情熱のある行動力と、周りの人がついて行きたいと思わされる魅力ある人間力が大事だということを、地域と共創パートナーから学んだ。」
などと振り返っており、地域やテーマの理解が深まっただけでなく、プログラムを通じて自身の思考や行動の変化にも気づいていました。
関係人口が地域にもたらしたもの
鈴木さんは、「吉原商店街がシャッター街になっていくのを見て、まちがなくなってしまう怖さを感じ、人を集めることに注力してきた。その結果、尖った人たちが目立つようになった。しかし、もっとライトに関わりたい人の存在に気づいていなかったので、そういった人たちにも寛容でありたい。」と話します。地域のことはその地域の人がいちばんわかっています。しかし、あえて外の人が客観的に仮説をぶつけてみると、思いもよらない発見がありました。
渡辺さんは、「網代が衰退していくことに被害者意識のようなものもなかったわけではなく、かといって一歩踏み出そうという勇気もなかった。自分がこうしたいと思うことを発信すると、来てほしい人が来てくれるのだと実感した。そこから自分のモチベーションも上がった。」と話しており、渡辺さんと受講メンバーのパッションが相互に良い方向へ作用し、さらには地域の他のプレーヤーの背中を押すきっかけにもなりました。
関係人口だからこそできる関わり方で、地道にまちづくりに取り組む
今回2チームが取り組んだテーマは、総合的に、まちづくりと呼べるものであると考えます。まちづくりは時間がかかるもので、今回の提案は、1年後、2年後、あるいはもっと先にならないと、目に見える成果が出て来ない部分もあります。ですが、これまでの過程は、吉原、網代に爪跡を残せたのではないでしょうか。
このプログラムは、「研修であって研修ではない実践型プログラム」であり、プログラムが終わったから関わりも終わり、というものではありません。machimoriとしても、今後も事業化に向けて伴走していきたいと考えています。縁あって関わったまちなので、ぜひ今後も何らかの形で引き続き関わってもらえると、まちにとっても変化が生まれるのではないかと思います。
地域課題を題材とした企業研修プログラム導入拡大のためのトライアルプログラム “GENSEN@SHIZUIOKA digest”
主催:静岡県 企画・運営:株式会社machimori
事業名:令和3年度ふじのくに関係人口創出・拡大事業モデル創出